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J3D連載コラム 

J3DコラムはJ3Dセミナーにご参加いただいた皆様にご執筆いただきましたコラムをご紹介しております。

新しい夢のある3D造形業界

株式会社エルアンドエル代表取締役社長 
堤 欽也 

混合診療と3D臓器モデル

 

 以前に比べ少しは光明が射し込んできている3Dプリンター業界であるが医療業界においては、認知度は低くまだまだ浸透しているとは言えません。それは3Dプリンターに関する知識不足、本体価格が高価、設置場所の問題、造形師(この場合は解剖学、画像診断学に精通しモデリング出来る医師)が極めて少数である。また外注の場合は造形料が高い、スループットが悪すぎ等の悪条件がそうさせているからでしょう。造形料に関しては現在の国民皆保険制度では賄うことは出来ませんが、民間医療保険会社が生命保険商品に3Dモデル臓器特約付き保険なる物を商品化すればいいわけである。(保険に加入するかどうかは別の話し)故に混合診療が可能になった場合は当たり前のごとく民間医療保険で造形物料金を賄う事が可能になるでしょう。今回は関係無さそうでありそうな、前回のコラムで少し出てきました混合診療とは何なのかを簡単にお話ししていこうと思います。話しが3Dプリンターから遠ざかる様にも思えますが、造形料を民間医療保険で賄うことが出来る日は近いと思うのであながち無関係とも言えないのではないでしょうか。ましてこのコラムをご覧の皆様方はほとんどの方が医療関係者の方であり、これから起こりつつある問題の当事者であるといっても過言ではないので、この駄文を読んでご不満や問題点があるようでしたら、ご教示いただければ幸いです。なぜ今TPPが解禁になると医療保険制度が崩壊してしまうと騒いでいるのでしょうか?日本の医療保険制度は国民皆保険制度であり全ての国民が平等に医療行為を受ける権利を有しています。まあ保険料金を払っていればのお話しですが。そもそも混合診療ってどのようなことなのだろう?簡単に言うと保険診療と保険外診療の行為を混合して行う診療、治療行為の事です。例えば抗がん剤治療と民間療法を組み合わせた治療を行った場合の治療費合計は、保険診療費+自由診療費の合計ではないのです。つまり個人が保険診療分も全て10割負担しなければならなくなってしまいます。しかし保険料金を納付している国民からすれば保険診療と保険外診療は別会計でいいのではと怒号が飛び交い裁判になったりもしましたが、国の指針には太刀打ち出来ませんでした。(差額ベッドと、先進医療に限定されて適用が認められています。)そんな強い姿勢で国が混合診療を認めないのなら日本の医療保険制度の崩壊なんてありえないはずである。にもかかわらず何故、崩壊の話題がでるのでしょうか。誰かが適当な噂を流しているのでしょうか?そうではありません。TPPが解禁になると非関税障壁、ISD条項といった大きな問題点が待ち構えていて混合診療を認めざるおえなくなるはずです。混合診療が認められると医療の2極化、つまり医療格差が始まってしまいます。つまり富裕層の人たちは、お金を払えば特別な知識や技術を持った医師の診察、検査、治療を受ける事が出来るわけですが、貧しい人達は同じ医療を受ける事は出来なくなります。皆さんは高度な医療を行うとお金がかかる。おそらく医療従事者の方達はそう思っているはずです。ただしそのお金は保険制度の社会保険や国民健康保険等から支払われるという認識のはずですが、混合診療や自由診療になれば個人で支払うか、民間医療保険加入者であれば保険会社が支払う事になるだろうと思います。よって国民の多数は治療費が高額になるため、必ず民間医療保険への加入が必須になるわけです。TPP解禁後すぐにではないにしろ、医産複合体による圧力、非関税障壁、ISD条項等が原因になり混合診療が行われるようになり、本来の日本の医療の姿は必ず歪みが生じ変化または崩壊していく可能性があるのではないでしょうか。

次回は医産複合体、非関税障壁、ISD条項について少しお話ししていくつもりです。

2015.10.15

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